成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

落語のはなし

 私は落語が好きである。

 

 なぜ好きかと言われると、ついつい「日本の伝統文化だから」とか「芸能として洗練されているから」とか大上段に構えたくなってしまうが、最も大きい理由はやはり「単純に面白いから」だと思う。

 

 出囃子が鳴って観客に拍手で迎えられる噺家さん。初めは世間話に毛が生えたような話からまくらに入り、やがて噺の中身に入っていく。噺の中身は大体が江戸・明治時代の話で、笑い話だったり悲しい話だったり様々である。大雑把に言ってこういう手順を踏んでくれるので、意外性がないところは欠点ともいえるかもしれない。しかしながら30分なり1時間なりの間で質が高くまとまった話を聞けるというのが魅力だと思う。

 

 ラジオを聴くのも好きだが、ラジオは(台本があるとはいえ)基本的には意外性を売りにした娯楽である気がする。コーナーやテーマが設けられているからある程度は形式化しているものの、リスナーから寄せられたお便りだったり、その日のゲストだったり、あるいはパーソナリティー自身のことだったり、ともかく新規の情報を楽しむもので、そういう点で落語とはある種真逆のところにあると感じる。なので「定番ネタ」が楽しめない人には落語は向かないのかもしれない。また「落語とは定番ネタである」という解釈をしてしまうからこそ、未知の噺や噺家さんにはなかなか手が伸びないのか。そもそも本来は寄席に通って噺家レパートリーを増やすものなのでは……

 

 まあ、そういう難しい話は置いておくとして。

 

 落語が聞くのが趣味です、と気軽に言ったらマウンティングされる恐れのある昨今の嘆かわしい風潮にも目をつぶるとして。

 

 単純に好きな落語、噺家さんを並べてみたいと思う。ネタバレ上等なので、気になる人は薄目でどうぞ。

 

 ~演目~

 「居残り佐平次」……品川に芸者遊びに行って、さんざん遊び呆けた後、店のほうが根負けするまで居座る男の噺。ここまでふてぶてしく生きてみたいぜ、と思わせるような佐平次のキャラが魅力。

 

文七元結」……ザ・江戸前人情話。登場人物がみんな気持ちいいくらいの江戸っ子なので、聞いている間に好感度がうなぎのぼりになる。ただやってることは割とクズ。

 

「千両蜜柑」……カテゴリ上は笑い話だが、そう単純に割り切れない魅力がある。真夏に蜜柑が食べた過ぎて寝込んだ若旦那のために、番頭が蜜柑を千両で買い付けてくるというあらすじなのだが、番頭の苦悩がものすごくリアルに感じられる。ただそのせいで落語っぽさがなくなっている気がするので、初めに聞くには向かないかもしれない。

 

噺家

柳家小三治……人間国宝。ちょっと前まで(今も?)バイク乗り回したり海外公演をしたりとアクティブな人。新作落語もたまにやる。表現できないレベルで上手い。

 

三遊亭圓生……故人。戦後落語界の超大物。基本的に古典の落語をしっかり演じており「堅い」という印象を受けるが、まくらでたまに時事ネタを出してくるお茶目な一面もある。

 

桂米朝……人間国宝。イケメン。戦後上方落語界はこの人のおかげで成り立ったといわれるくらい、噺の発掘・継承に熱心だったらしい。軽快な語り口を維持しつつも、様々な役を演じ分ける手腕は見事。

 

桂文枝……落語界のミスタースキャンダラス。正直上記3人と比べると格は落ちる気がするが、古典も新作も演じるオールラウンダー。桂文珍師匠なんかもそうだが、上方落語は「○○師匠の落語」になる率が高い気がする。なのでハマる人はハマる。

 

 なんとなく書きなぐってみたが、伝統芸能といいながら最も敷居が低いものの一つだと思うので、興味があればぜひ聞いてみてほしい。

 

追伸:コメントの設定を変更して、だれでも書けるようにしました。気が向いたら返信などするかもしれませんが、基本的には野晒しにしようと思うので、お好きなことを書いてください。できればこちらが凹むようなことは書かないでください。