成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

旅の商人の夢

 先日、弊学の助教の話を聞く機会があった。タイやオーストラリアなどで働いたり学位を取ったりした、かっこいい国際系の人である。

 

 しかし、彼も今は「就活」に追われている。現在のポストは任期制であって、新しい勤め口を探さねばならない。しかし、彼の国際的な経歴が、逆に就職への足かせになっている面も否めないそうだ。

 

 彼は現在博士を終了してからポスドクを経ずに助教という地位にいる。海外で博士号を取得したため、国内にコネがなく、一般公募に出さざるを得ない。かといって海外で就職すればよいのではないかと思えば、海外(ヨーロッパ)では博士号を終了した後、博士課程の学生を指導する役職を経てから助教などになるのが一般的らしく、彼は修了直後に帰国して働き始めたために、CVに書ける肩書がなく、応募してもその部分で低い評価となり採用されないらしい(完全一般公募かつ点数まで教えてくれる採用システムが存在することにも驚かされたが)。

 

 私は「研究者ってどこでも生きていけそう!」なんて考えていたのだが、やはりそう甘い世界ではないようだ。優秀であればどうにでもなるというのは単なる思考停止であって、自分が選択したのだという自負と研究を続けるという意志がなければやっていくのは難しそうだなと感じた。

 

 もう一つ思ったこととして、研究者としての人生はパーマネントポスト(任期のない役職)を求め続ける道という表現もできそうだということである。あっちの研究機関に3年、こっちの大学に4年というように次々職場を変える姿は自由人を想起させるが、やはり「安定」というのも重要なのだろう。

 

 

 ライトノベル狼と香辛料」で、旅の商人であるロレンスは、いつか自分の店を構えることを夢みて、諸国を巡っている。しかし、読者を惹きつけるのは、彼が行く先々でである人や町、出来事なのだ。実際ロレンス自身も「夢を追い続けようか、それとも資金が貯まっても旅を続けようか」と度々葛藤に悩まされている。

 

 私は数年に一度このシリーズを読み始めるのだが、最終巻(最新刊?)にたどり着いたことがない。恐らく、ロレンスに答えを出してほしくないのだと思う。我々はみな旅の途中にあって、まだ旅を続けてもいいし、店を持ってもいいのだ。そういう先の見えない状態を不安に思うのではなく、ワクワクするようになれることが、人生を楽しむ秘訣なのではないか。

 

物事にはたくさんの終わらせ方があるだろうが、明日もまた生きていくのであれば、明日につながるものを選択しなければならない。そうだろう? ーーーーロレンス (『狼と香辛料』より)

 

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