成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

46日目:他国人は「自由」なのか

 フィンランド人はスローライフだ、非学歴社会だといった言説を、こちらに来る前はかなり聞いていた。日本は大学のブランド名が幅を利かせており、就職を始めとした色々な場面で差別を受けるが、翻ってフィンランドはみんなそんなことは気にしないのだと。

 

 しかし、本当にそうだろうか。

 実際20代後半学士とか、50代修士とか、そういった人はちらほら見かける。ただ、かれらは学士――修士――博士の直線上のどこかに位置しており、どこに位置するかで就ける仕事、世間での扱いは全く変わるのだ。例えばフィンランド外務省であれば、フィンランド語、スウェーデン語、英語の能力に加えて、関連分野での修士号の取得、さらにインターンでの選考を経てようやく採用されるらしい。

 

 また、外国人が仕事を探すのも難しい。掃除夫になるにしてもフィンランド語能力と掃除夫の職歴が必要がある。ことインターンに至っては関連分野での学士・修士が必要になるため、狭き門であることは否めない。

 

 そういう点で日本を見てみれば、なるほど高卒・学士でも色々な分野に就職できる。バイトも気軽に探せるし、日本語がちょっと不味い外国人もコンビニで働ける。そういう意味ではかなり自由な社会と言える気がする。日本社会には確かに「大学ブランド」としての学歴社会は存在しているが、学士修士博士、分野間での断絶は存在ないのではないか。そういう意味で、日本のソレを学歴主義と呼ぶなら、フィンランドのものは学歴制度とでもいうべきものが存在していると言えそうだ。

 

 しかし、その道のりを自分のタイミングで歩めるというのは、やはりフィンランドの美点だろう。高校を出て、ギャップイヤーをとってもいい。学士を取ってから働いてもいいし、修士に直接進んでもいい。しかしやはり人生における重大イベントの適正時期は存在するようで、そこから外れたくないという気持ちは皆多少なりとも持っているらしい。他人にとやかく言わない/言われないだけで、そういった規範は確かに存在するのだ。結局、その規範をどこまで意識するかではなかろうか。

 

 同じことは他のヨーロッパ諸国と少なくともカナダには当てはまるようで、こちらに来てから多少なりとも進路の話をした人の中には、急ぐ人もあり、おっとりした人もあり、規範を意識したとしても皆考えることは様々であった。

 

 ただ一つ言えることは、多くは「悩める20代」であり、このくらいの年代で答えのようなものを掴んでいる人は少ないということである。これは留学に来る人間が特にそうであるだけなのかもしれないが。これからも大いに悩もうと思う。