成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

原点にして頂点

 この五日間、安いフライトを見つけたのでブタペストへ旅行していた。日本人フィンランド人合わせて10名弱の大旅行となったが、各々に各々のしたいことをしていたので、ツアーにはならずに済んだ。

 

 ブタペストとは因縁浅からぬ仲である。初めて訪れたのは1年と5ヶ月前に大学のプログラムで、次が10ヶ月前に旅行の途中で、そして今回が三度目となった。当然観光のモチベーションはそれほどなく、過去に作った友人たちを訪れることが私の旅行の肝となった。何人かは国を離れていて会えなかったが、滑り込みセーフで会えた人もいた。彼ら彼女らの近況には一喜一憂させられ、時の流れの速さにただただ驚くよりほかなかった。

 

 初めて出会ったころ、ブタペストの夏の抜けるような青空と開放的な空気も手伝って、彼らの未来は前途洋々たるものに見えた。彼らが良くしてくれたのは私が彼らの憧れる日本から来た人間だからという部分も大きかったのだろうが、それでも何人かとは多少深い話もするほどの関係を取り結ぶことができた。彼らの多くは夢を持っており(日本に行きたい/働きたいというものも少なくなかった)、それを叶えんとしていた。あれから1年半経って、彼らは夢に向かって進んでいたが、その道のりは必ずしも易しいものではなかったようだ。ある人は日本で働き始め、ある人は専攻を変え、ある人はイギリスで学び始めた。その代わりに、疎外感を味わったり、人間関係のトラブルに対処することを求められたのだ。私は彼らの人生の登場人物ではあるが、主要キャラクターではない。あくまで脇役である。その脇役がこんなことを言うのも申し訳ないが、当時輝いていたかれらがある種「普通に」悩み多き人生を送っているのは少し悲しくもある一方で、彼らの健闘は全く素晴らしいものだと思う。これからも彼らの友人であれることを切に願う。

 

 翻って我が身はどうか。1年半前といえばちょうど専攻が決定したころである。あのころ右も左もわからなかった自分が、なんとかかんとか自分なりの方向を打ち出してやっている。それは小さなようでなかなか大きなことなのではないかという気がする。それほど勉強してこなかった自覚はあるし、目の前に山積する課題にため息をつかされることも多かったが、それでも振り返ったときに何かしらの進歩というか、納得ができるのであればいい人生といえるのではないだろうか。明日から学期が始まるが、なんとか腐らずにやっていきたいものだ。

 

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勝敗は兵家のつね。人の成敗みな時ありです。……時来たれば自ら開き、時を得なければいかにもがいてもだめです。長い人生に処するには、得意な時にも得意におごらず、絶望の淵にのぞんでも滅失に墜ちいらず、ーーーーそこに動ぜず溺れず、出所進退、悠々たることが、難しいのではございますまいか。 関羽 吉川英治三国志