成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

193日目:冬風辞

 各方面への連絡が終わり、どうにかこうにか帰還のめどが立った。書類やらサインやら求めてくるのは全部日本の大学の方で、ヘルシンキ大は「帰りたいなら帰れば?」と言わんばかりの応対で、ありがたい一方でやはりお客さん止まりだったんだなと思った。

 

 最近は帰国準備がバタついていたこと、相変わらず外出が億劫だったことで、久々にアニメを見倒していた。人から勧められたもの、なんとなく今流行ってるものを探して、『私に天使が舞い降りた!』『かぐや様は告らせたい』『五等分の花嫁』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を立て続けに見た。それぞれ別々の方面で面白いのだが(特に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はボロボロ泣いてしまった)、同時に懐かしさのようなものを覚えた。

 

 良くも悪くも、「お約束の展開」が多いのである。登場人物たちがどういう役として登場してるかがわかれば、次にどういう展開が待っているかは非常に想像しやすい。だからこそ笑ったり泣いたりできるポイントが事前に分かり安心して楽しめる。それは恥じることではまったくない、それは重々承知しているのだが、作品の芸術性だの深みだのと一切関係なく、ジャンクフード的に食べ慣れたものを片っ端から口に入れていく卑しさのようなものを感じるのである。

 

 結局それも「フィンランドまで来て何してんだ」というような後ろめたさから生じているような気がしてならない。あと17日で終わる留学中に何もできないもどかしさが、形を変えて襲ってきているのだ。4月からは間違いなく忙しくなる。というか、忙しくしなければならない。己の人生の分かれ道に近づいてきているのだから一所懸命に努めるべきだろうが、その手前にいて何もしていない自分と向き合ったとき、できないからしていないのか、やれないからしていないのか、どちらなのかがわからないのだ。「人事を尽くして天命を待つ」の境地にはどうやったらたどり着けるのだろう。

 

フィンランドの冬はまだ終わらない。