成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

東京について。帰国後の雑感

 今回は全く異なる内容を書くので、記事を二つに分ける予定だ。

 

 さて、まず現在私は都内のカプセルホテルからこれを書いている。どういうことだろうか。

 帰国後まず実家に帰り、不動産に問い合わせをしたものの良い物件はなかなか見つからず、結局不動産屋でバイトしている友人の助けでどうにか住めそうな家を見つけたのだが、一週間でなんとかするといった不動産屋が契約を締結する段になってさらに数日かかるとのたまい始めた。渋々承諾したのだが元々お世話になっていた友人の家に居づらくなり(彼は良くしてくれましたが、彼の放つリア充オーラと使わなくてよい気を使うのに疲れただけです)、出奔してこのカプセルホテルへ転がり込んだ。別段寝れる場所があればどこでも構わないのだが、あれだけ回避したかった東京の通勤ラッシュに巻き込まれることになり閉口している。「お前は計画がガバガバなのを人間力()でカバーしてる」と指摘されたが、まさにその通りだと思う。

 

 さて、東京に戻ってきてからのことだが、思っていたのと少し違ったことがいくつかある。一つには知人の反応で、帰ってきても「あっそう」くらいの反応だった。まあ騒がれるのも嫌だったのだが、何の反応もないとそれはそれで寂しい気がする複雑な乙女心である。それから、東京という土地に特に愛着を感じていないことである。留学中は渋谷やら新宿やら大学やら感慨深く思い出していた気がするのだが、いざ戻ってみると大学が忙しいのもあって足を運べないし、すごくいきたいとも感じない。かといってフィンランドが恋しいかと聞かれれば、もちろん向こうに残してきた友人たちは恋しいが、街自体に愛着は特にない。ほかに食べ物についてもそうで、実家に帰った日に味噌汁を飲んだ時には笑みがこぼれたが、それ以降特に何を食べても「そうそう、この味!」みたいな感覚がしたことはない。半年フィンランドで大分舌をやられたかもしれない。

 

 満員電車に乗るのをすぐ諦めるし、食事もなるべくシンプルに済ませようとするし、ともかくフィンランドの影響が色濃い。また東京に慣れてしまえばそれもなくなるのだろうが、東京への憧れが色褪せた今、果たしてプラマイゼロくらいまで戻せるかというとかなり怪しいところがある。東京に出てきて、東京のいい面も悪い面も見えてきて、最終的に慣れていくという上京プロセスではなく、東京の悪い面しか見えないままいやいや生きていくということも起こりかねない。

 

 そして多分、今現在の東京は私にとって生きることの象徴でもあるのだと思う。学位を取るという実際的な理由もあるが、ここにはどうしようもない現実が横たわっていて、そこから逃げることも目を背けることもできない。唯一助かる道はこいつを真正面から見つめて踏み越えていくことなのだが、やはりそれも難しい。日々の忙しさの中に対策を考える時間は失われ、死んだようになりながらなんとか一日一日を終えていく。そんなやるせなさが確かにこの街にはある、と思う。いや結局私次第ということは承知しているのだが。