成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

「カメラを止めるな」と「ペンギン・ハイウェイ」

※完全なネタバレを含みます

 

 日本を去る前に観た映画群に、忘れないうちに感想などを書いておきたい。

 

 

 「カメラを止めるな」は非常に有名な映画となったし、そもそも有名になったから見に行ったのだが、確かに事前情報なしで観た方が面白い映画でろう。

 

 一度本編部分を流しておいて、そこで不審に思わせたりちょっと笑わせた部分の伏線をメイキング部分で回収していくという構成は見事だし、あれを超低予算で撮影したというのだから全く驚きである。しかし一方で、ストーリーが何か感動を呼び起こすといったものではないし、ところどころにちりばめられたなんちゃって感動エピソードも、逆に白けてしまうようなものだった。そこがまたこの映画のB級映画感を倍増させているのではないかと思う。なので、「S級のB級映画」という評価が妥当ではないかと思う。あくまでB級映画なのだが、構成と演出がとてもよかった。

 

 一方「ペンギン・ハイウェイ」は、原作を以前に読んでいたので感動することはわかっていたが、それでもなお感動した。「お姉さん」が消えてしまうことは知っていたが、それでもなお、もしかしたら映画版では消えないかも……という一縷の希望に縋ってみてしまったし、その分終盤のアオヤマくんの悲しみにもかなり感情移入してしまった。「僕が大人になるまで、どれほどのことを学ぶだろう」という問いかけは、そのまま私自身への問いかけでもあり、世界を研究者として、生き生きと見つめるアオヤマくんの態度には大いに学ぶことがあった。彼の活動範囲は自らが住んでいる街だけなのだが、それでも世界を楽しむ術を知っているというように感じられるのだ。彼には友人がいて、「お姉さん」がいるが、それは根本的な要因ではない。それは冒頭の問いかけに戻るのだが、「明日の自分は今日の自分よりきっとよいだろう」という将来への期待なのだ。明日が今日よりよい日になるからこそ、心配もなく、生き生きとしていられる。それは多くのことを学んでいるからという彼なりの根拠があるからなのだが、実はほとんど無根拠なのではとも思う。未来への無根拠な期待。私がとうの昔に忘れていたものを、アオヤマくんが届けてくれた気がした。

 

 個人的な好みで言えば、文章量でもわかると思うが、私は「ペンギン・ハイウェイ」の方が好みである。観る者に活力を与える映画が、どうしてただ面白い映画に劣ることがあろうか?