成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

The Return of the Geek

 日常生活が戻ってきた。正確には夏休みに入っているので日常でもないのだが。

 

 実習では色々なタイプの人がいた。数年の付き合いとなる彼女と結婚まで行っていいのか悩む者、一年と少しの付き合いの彼氏との結婚を夢に見るもの、半分病みながら自称恋愛経験なしに挑み続ける者、両方とも院進する中で結婚していいか悩む者、アイドルオタクを続けながら彼女を得る方法を模索する者、社会人彼女獲得を画策する者……奴らを根こそぎ洗い流す雨はいつ降るんだ? というわけではなく、なんだか彼らを全員を恋愛遍歴で表現してしまったものの、趣味嗜好から専攻、悩みの中身までまるで異なるまったくの他人と10日も過ごしたことはよい経験になったと思う。

 

 彼らとの話は、全く違う道にそれぞれ立ちながら、少なくとも上辺では他の人間の存在を認めるようなものだったと思う。所詮自分の悩みに人が果たせる役割など微々たるものだ。しかしそれでいて、自分はこれに悩んでいるぞと人に開示することは往々にして精神によい方に作用する。要は、自分以外の人間に、無視するわけでもなく、押しつけがましくもない姿勢を貫くことが重要なのではないか。共感の作用こそがコミュニケーションの役割の大部分であり、実際の共感はわからなくとも、共感した気になることで多少なりとも気が晴れればそれでよいのだ。分かり切ったことかもしれないが、それを再確認できたことの意味は少なくない、と少なくとも今は思っていたい。

 

 これが終われば、次の大きなイベントはいよいよフィンランド行きである。行けば最後、1年弱は戻って来ることのできない切符ではあるのだが、とりあえず往復ではあるのだから良しとしようではないか。