成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

敗者よりも不味い奴を知ってるか?

 全く知らない奴ではないけど、友人と呼ぶのは憚られるくらいの学科同期から卒論打ち上げのお達しが届き、参加する理由もしない理由もなかったので参加してみることにした。

 

 会場は都内のタワマンで、面子の1人が親と住んでいる部屋の一つだった。午後の早い時間から集まり酒を開けつつおつまみをつまんでいたが、想像していた通り暖かい同窓会とはいかなかった。それほど口数が多い人々でもないし、共通の話題があるわけでもないから、すぐ会話が途切れるのだ。

 

 とはいえその中で話を拾っていくと、私と院進するもう1人以外はみな就職を決めていて、それぞれに別の思惑を持っていた。こいつは冷静に就職先を決めるだろうと思っていた奴が意外と夢を追いかけていたり、大手の内情が漏れ聞こえてきたりと多少は面白い話が聞けたが、どうしても就職を選んだ「彼ら」と、院進を選んだ「私」を対比せずにはいられなかった。

 

 院進を選んだ以上、それほど親しくなかったにせよ同じ時期、同じ状況にあって就職を選んだ彼らに対し理解はしても共感はできない (もちろん、本当はもっと進路というものは多様であるべきなのだけれど)のである。どこかのタイミングでという訳ではないが、私が就職活動を辞めてしまったのはアカデミアでやり残したことがあったり、修士や博士を終えてからのキャリアを考えたからであって、この選択が私にとって正しかったのかを判断するにはいくらかの時間を必要とする。

 

 いわば私は掛け金をベットして、さらに大きいリターンのためにこれからベットしようかという状態にある。なので、同じような手札を持っているであろうに早々に勝負を降りて別の台に行ってしまった彼らには、頭のどこかで理解しつつもどこか突き放すような気持ちを持ってしまう。もちろん彼らは彼らで就活における勝負に何らかの結果を残してきたし、さらにこれから実社会の中で勝負を求められることだろう。彼らが何を目指しているかも知らないが、「私の勝負」においては私の掛け方が正解だと信じている。尤も、この博打に勝てるかなんて分からんし、あまり分はよくなさそうなのだし尚更人のことを気にかける余裕などないはずなのだが。ともかく自分の勝負を投げないようにせねばなと決意を新たにできた、ということにしたい。

 

“You know what's worse than a loser? Someone who won't admit he played it wrong.”