成すも成さぬも 今を楽しめ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

10日目:始めの一週間を終えて

 正確に言えば金曜日で1週間だったのだが、授業の諸々やイベントごとをひっくるめて考えれば今日が一週目と呼んで差し支えないだろう。

 

 荷物も持たずに入国したときはおいおい大丈夫かと思ったが、人に恵まれてかまたは国に恵まれてか、どうにかこうにか生きながらえている。

 

 今のところ、生活にそれほど強い不便は感じていない。確かに物価を含めた諸々はとても高いが、東京と比べて非常に高いというわけでもない。マクドナルドの一番安いセットで1000円くらいなのはさすがに閉口したが、それでもこちらでは時間があるおかげで弁当(というか現状ではサンドイッチが関の山だが)が簡単に作れる。大学が始まっても時間があるかどうかは分からないが、それでも学食は安いしそこそこの広さがある。弊大学のように混みすぎてうんざりするというようなこともないだろう。

 

 また、人間関係にもそれなりに満足している。今のところ日本人の知り合いを積極的に作ろうという気もないし、知り合い以上友達未満というような人間はそこそこできた。少なくとも遊び相手と食事の相手には不自由しない状況にある。相変わらずリスニングが7割、スピーキングが4割前後の満足度といった感じだが、まあ慣れていくだろうと楽観視している。一つ不満があるとすれば、彼らと曲の好みが合わないことで、特にクラブ系(?)の曲はほとんど知らないために彼らほどテンションが上がらないのだ。

 

 問題は勉強への熱意で、これは遊びと両立させるのが極めて難しい。今はまだ大学が始まっていないからということで自分を甘やかしているが、大学が始まってからはもう少し勉強できたらなとは思う。

 

 いくつかのニュースを上げるとすれば、ドイツ軍人の友人ができたこと、全裸屋外サウナ寒中水泳を経験したこと、海外クラブに初参戦したことだろうか。

 

 ドイツ軍人は、身長が160くらいの20代前半の女性で、全く軍属感はないのだが、その実軍からお金をもらって留学している身であると聞いて大変驚いた。彼女の軍人エピソードは聞いていてなかなか面白かったし、また彼氏がステレオタイプ的な軍人なのがツボだった。

 

 全裸屋外サウナというのは、市街地を少し外れた開発中のエリアにあるSompasaunaのことで、ここはサウナに入りたい地元民が勝手に作ったというそれだけで意味が分からないサウナ群なのだが、最近焼失したらしく、それでもめげずに再建されたのが現在の姿である。焼失の翌日には一棟サウナが立っていたというから森見登美彦の小説にでも出てきそうな全く不思議な建物である。ここには更衣室もロッカーもなく、来場者は荷物をその辺において服を脱いで即サウナに入る。服を脱いでというのがポイントで、私の感覚では男性の8割は全裸で、女性でも4割は全裸だった。その状態でサウナに入ったのち、火照った体を海に浸かって冷やす。これをひたすらローテーションするという全く訳の分からない行動をビール片手に行うのがフィンランド人である。非社交的と名高い彼らもここでは開放的になるらしく、実際とあるおじさんはこのサウナのアレコレを説明した後でビールを二缶もくれた。冬場も変わらず人が来るというのだから全く驚きである。

 

 海外クラブに初挑戦した話はそれほど面白くもないが、単に日本のクラブに比べてみんなもっと「自然」だったという話である。もちろん私は国内のクラブは1度しか言ったことがないし、比較するには不十分であるが、こちらのものは人が少なく、音楽がガンガンにかかっていないスペースも準備されており、踊ったりナンパしたりしなくても過ごしやすい環境だった。それにしても、彼らの自然な踊りのバリエーションはいったいどこから湧いて出てくるのか、また何が彼らをそんなに踊りに駆り立てるのかはわからない。私も知ってる曲が流れているときにテンションが上がって口ずさむ時はあるが、それを体を使って表現しようとはしない。しかし彼らは全く自然にそれをやってのけるし、動きも単調でない。今まで培ってきたものの違いなのだろうが、全く興味深い。

 

 思っていたほどつらいスタートにはならなかったが、授業という点から考えればまだ始まってすらないとも言える。ここにホームシックが加わったとき、どういう化学反応が起こるかは未知数であるので、引き続き気を付け過ぎず、緩め過ぎず生きていけたらと思う。